悲しいことに高齢になるにつれ、様々なところが弱ってくるのは避けることができません。特に、気づかない間に衰えて思わぬ事故に繋がりやすいのが『飲みこむ力』です。
とりわけ高齢の親が一人暮らしをしている場合、食事や飲み物を上手く飲み込むことができず喉を詰まらせた時、周囲に助けを求めることが難しい状況にあります。ですが、このような事故も対策をすることでリスクを大幅に軽減することができます。
そこで今回のコラムでは、『飲みこむ力』が衰える原因と高齢になった親がいつまでも楽しく食事ができるための対策をお伝え致します。
見守りサービスという選択肢も!
『飲みこむ力』が重要な3つの理由とは
そもそもなぜ高齢者にとって『飲みこむ力』が重要なのでしょうか?
①食事の楽しみ
『飲み込む力』が衰えてくると、喉につまりそうなお餅や、海苔などが食べづらくなります。高齢になると若い時にできていたことがだんだんできなくなってきて、楽しみが減ってきます。そのような状況の中、「食べること」は高齢者にとって数限られた生きがいでもあるため、楽しくご飯を食べれることはとても重要になります。
②栄養状態
『飲み込む力』が弱って食べることがつらくなると、習慣的な食事摂取量が低下して、エネルギーやタンパク質が欠乏して低栄養状態に陥りやすくなります。
③誤嚥(ごえん)の危険性
誤嚥(ごえん)とは、食べものや飲み物が声門以下の気道(気管)に流入することです。健康な人は、気道に物が入ると反射的にむせたり咳をしたりして誤嚥したものを自力で排出することができますが、その力が弱っている高齢者は、それができず物が気道に入り込んでしまう危険性が高まります。
更に、誤嚥により口やのどにいる細菌も一緒に肺に入ると、肺の中で細菌が増えてしまうため、肺炎のリスクが高まります。
『飲みこむ力』が衰える原因とは
では、なぜ高齢になるとこのように『飲みこむ力』が弱るのでしょうか。飲食物などを口から食道に送り込むまでの機能を専門用語で「嚥下(えんげ)」と言います。高齢になると、以下のような原因からこの嚥下機能が衰えがちです。
1. 自分の歯が少なくなる
厚生労働省の調べによると、後期高齢者は平均約16本自分の歯が残っていて、約3割の人が総入れ歯を使っているというデータがあります。昔に比べると歯の喪失状況は改善傾向にあり、国際的にみても日本人の高齢者は比較的歯が残っていると言われています。とは言え、高齢になると残っている自分の歯は少なくなる傾向にあります。
2. 唾液の分泌量が少なくなる
唾液はかみ砕かれた食べ物をまとめて、飲みこみやすくします。ご飯をよくかんでいると、唾液の中の酵素がでんぷんを分解して吸収しやすい形に変えます。加齢によって、口のまわりの筋力が低下したり、歯が少なくなったり、ホルモンバランスが変化したりすることによって唾液の分泌が少なくなると、食べ物をうまくかみ砕くことができなくなります。
3. のど仏を動かす筋力が弱くなる
喉のまわりの筋肉がのど仏を引っ張り上げていますが、加齢によってこの筋肉が衰えると、のど仏の位置が徐々に下がってきます。そうすると、飲み込むときに気管を閉じるタイミングが微妙に遅れて隙間ができます。そこから食物が入り、飲みこめず、喉をつまらせてしまうということが起きやすくなります。
(参照記事:「高齢者が餅を詰まらせる事故にご注意!対策や誤嚥(ごえん)につながる食材の特徴をご紹介」)/「【介護のお悩み】誤嚥(ごえん)とは?原因や症状、予防トレーニングを解説」2023年2月 ベネッセスタイルケア/参照記事:「飲み込む力は加齢で衰える。鍛える方法を知っておこう」2018年8月/「高齢者の摂食嚥下(せっしょくえんげ)機能に影響する要因」2022年4月)
『飲みこむ力』は鍛えることで簡単に改善できる!
少し怖い話が続いてしまいましたが、『飲み込む力』は自宅で手軽にできるトレーニングで鍛えることができるので、毎日続けることで比較的簡単に回復します。
①顔や首、口周辺をマッサージする
指や手の甲でやさしく筋肉をマッサージすることで、緊張を和らげます。お風呂に入って筋肉が柔らかくなっている時にすると特に効果的です。
②肩と首のストレッチする
首を傾ける・回す、両手を上げたり下げたりするといったストレッチをすることで、飲みこみに必要な筋肉を鍛えます。更に、肩と首のストレッチをすることで、誤って食べ物が気管に入ってしまった際に外に出す力もアップされます。
③声を出す:「パ・タ・カ・ラ」体操
「パ・タ・カ・ラ」体操は、食べたり飲み込んだりする機能を鍛える代表的な体操の一つです。4音を大きな声で繰り返し発音して、飲みこむ力に関係する器官を動かします。「パ」「タ」は唇と舌の筋力を鍛え、「カ」で食道につながる喉の奥を動かします。「ラ」で食べ物をのどに送る舌の動きを鍛えます。
④変顔体操をする
洗面所の鏡の前などで、顔を大げさに動かして変な顔をしてみたりすることで、飲みこむ時に必要な筋肉が自然と鍛えられます。
⑤歌を歌う
歌を歌うことで顔や喉まわりの筋肉だけでなく、腹筋も鍛えられるので、食べ物が気管に入り込んだ時に外に出す力が高まります。
(参照記事:「飲み込む力は加齢で衰える。鍛える方法を知っておこう」2018年8月)/「【はじめての方へ】誤嚥(ごえん)を予防|自宅でできる嚥下リハビリ」LIFUL介護)
高齢の親が一人暮らしをしている場合の対策とは?
とは言っても、子が親に「『飲みこむ力』を鍛えた方が良いよ。」と勧めても本人がその気にならない限りそのような対策を継続するのは難しいかと思います。特に、親が実家で一人暮らしをしている場合、日々の食事の様子がわからないので、『飲みこむ力』が弱っているのか把握することが難しいです。更に誤嚥は飲み物や食べ物を食べている際に突発的に起こるので、そのような緊急時に素早く対応できるよう、周囲に通知ができるシステムを備えておくことが重要です。
そこでお勧めしたいのが、見守りサービスの活用です。『ひとり暮らしのおまもり』は、日常生活で1日に1回は開ける冷蔵庫のドアなどにセンサーを取り付け、そこが一定時間開かない場合(5~24時間で設定可能)に見守る側のアプリに通知が行くという仕組みです。例えば「最近、親の食が細い気がする・・・ちゃんと食べているのかな。」と心配な場合は、冷蔵庫にセンサーを取り付けておくと、何も冷蔵庫から取り出していないという異常を知ることができます。
更にオプションの『ケアウォッチ』があり、誤嚥を起こした場合に、親が左右についているボタンを同時に押すと、見守る側のスマホに大きな音でアラートを送ることができます。
ですが「起こるかもしれない突発的な事故のために、月々あまりコストをかけたくない・・・。」と思われるのではないでしょうか。『ひとり暮らしのおまもり』は、工事不要、月額費用がかからず9,240 円(税込)と低額で手軽に始められるサービスです。オプションのケアウォッチも3,960 円(税込)で追加することができます。
親がいつまでも、楽しく安心して食事を楽しむことができるように、『ひとり暮らしのおまもり』を検討してみてはいかがでしょうか?