寒い季節になると、何かとメディアなどで取り上げられるようになった高齢者のヒートショック問題。特に高齢の親がいる場合、気になってはいても「どのような症状なんだろう・・・」「対策はないのかな・・・」と、実のところよく理解していないという方が多いのではないでしょうか。
そこで今回のコラムでは、ヒートショックの原因と親のためにできる予防対策をご紹介いたします。
ヒートショックとは
ヒートショックとは、急激な環境温度の差で、血圧が変動することが原因で起こる健康リスクのことです。
【温度差による血圧の変化】
・暖かい場所から温度の低い場所:血管収縮→血圧が上がる
・温度の低い場所から温度の高い場所:血管拡張→血圧が下がる
このような血圧の乱高下は、誰にでも起こりますが、高齢者は血圧を正常に保つ機能が低下していて心臓に大きな負担がかかるため、健康への影響が出ることがあります。ヒートショックは目まいなどの軽い症状から、重篤な場合は、心筋梗塞や脳卒中を引き起こします。
ヒートショックの現状とは
高齢者のヒートショックによる疾患や死亡など、その影響はどのくらいあるのでしょうか?実のところ、全貌はまだわかっていないと言われています。ですが、高齢化が進むにつれ、家庭での浴槽による死亡事故は年々増えていると言われおり、10年で1.5倍まで上昇しました。
【高齢者の「不慮の溺死及び溺水」による死亡者数の年次推移】
(参照元:「消費者庁 冬季に多発する 高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」消費者庁/「室温が体に影響を与える『ヒートショック』とは?症状や対策、なりやすい人」2022年1月 株式会社LIXIL/「ヒートショック対策について」2020年11月 滋賀県)
ヒートショックが起こりやすい季節とは
ヒートショックについてより深く理解するために、どのような季節に起こりやすいのか見てみたいと思います。
11~4月までの秋から春先にかけて、ヒートショックが起こりやすく7割を占めています。
なぜ秋~春先にかけてヒートショックが起こりやすいかと言うと、昔ながらの日本家屋は、気密性が低くトイレや脱衣所など暖房設備がない場所も多いので、住居内で温度差が生じやすくなるためです。
そこで、寒い季節に適切な対策をとることが重要です。
(参照元:「室温が体に影響を与える『ヒートショック』とは?症状や対策、なりやすい人」2022年1月 株式会社LIXIL)
ヒートショック:3つの予防対策とは
少し暗い話になってしまいましたが、ヒートショックは適切な予防対策をすることで防ぐことができます。
1.リスクの高いタイミングと場所を把握する
入浴時の事故が注視されがちなヒートショックですが、実は住環境において様々な場所とタイミングで起こり得ます。
【ヒートショックのリスクが高い場所とタイミング】
・朝、布団から出るとき
・寝室からリビングに移動するとき
・ゴミ捨てなどちょっとした外に出たとき
・リビングや寝室から廊下に出たとき
・トイレに行くとき など
まずは、親の住環境と生活の様子を確認し、どのような場所やタイミングでヒートショックが起こりやすいか確認し、そのリスクを減らす対策をすることが必要です。
2.住居の寒暖差をなくす
寒暖差が多い場所を把握した上で、以下のような対策をすることでヒートショックのリスクを軽減することができます。
・暖房器具を置く
脱衣所やトイレなど寒い場所に暖房器具を取り付けることで他の部屋との温度差を減らし、ヒートショックのリスクを減らすことができます。エアコンを取り付けるのが最も効果的かもしれませんが、新たに取り付けることが物理的に難しかったり、可能であったとしてもそれなりの費用がかかるというデメリットがあります。
今は、セラミックヒーターや電気カーペットなど手頃かつ小型で狭い場所でも安全に使える様々な暖房器具があります。「親がなかなか自分では買いに行かない・・・」ということがあれば、プレゼントをしてあげるのもよいのではないでしょうか?
・気密性の高いマンションに引っ越す
新しいマンションは、昔建てられた家屋よりも気密性が高いため、部屋ごとの寒暖差が低いです。また階段のある戸建ては高齢者にとって負担になるだけでなく、転倒のリスクも高いです。そこで最近、ある程度の年齢になったり、一人暮らしになったタイミングでコンパクトなマンションに引っ越す高齢者も増えていると言います。ただ、親によっては住み慣れた家を離れたくないということや、もしくは引っ越しをするのは体力も気力もいるので、難しい場合もあるかもしれません。
・思い切って住居をリフォームする
近年、異常気象や光熱費高騰の影響もあり、高性能の断熱材が開発され、需要も高まっています。建物の外部に面する床や壁、天井や屋根などに貼り付けることで冷気や熱の伝達を遅らせ、暑さや寒さを防ぎ住居内の寒暖差を押さえることができます。リフォームは、中長期的に見れば光熱費を節約できるとは言え、当然のことながら、施工の時間とかなりコストがかかるというデメリットがあります。
3.見守りサービスを導入する
ヒートショックは、布団から出るとき、寝室からリビングに移動するとき、ちょっと外に出たとき、トイレに行くときなど様々な場面で起こります。そこで、緊急の時に、親が子にSOSを送れるような見守りサービスをお勧め致します。『ひとり暮らしのおまもり』は、センサーが設置された場所が「一定時間動いていない」という異常があった時に見守る側のアプリに通知が行くというシステムですが、オプションでSOS発信ができる「ケアウォッチ」を契約することができます。
「ケアウォッチ」は見守られる側が異常を知らせたい時に左右のボタンを同時に押すと、見守る側のスマホに大きな音でアラートを送るという仕組みです。
ヒートショック対策には予防と事故が起きた時の迅速な対応が重要です。
親がいつまでも自立した生活を安心してできるよう、住環境を見直すと同時に、見守りサービスの導入で緊急時に備えてみてはいかがでしょうか?