就職してある程度の年数が経過した20代後半から30代は、自立した生活ができるくらいの収入が得られるようになって、一人暮らしを開始する社会人が多い年代と言われています。
親としては子の成長を「頼もしい」と思う反面「一人でちゃんと身の周りのことをできるのかしら…」「ちゃんと食べているのかしら…」と心配な気持ちもあるかと思います。
実は近年、一人暮らしをする若者の生活を維持する能力と意欲が欠如する『セルフネグレクト』に陥る若者が増えていると言われています。
そこで今回の記事では、セルフネグレクトとは何か、またその原因と、親としてできることをご紹介したいと思います。
セルフネグレクトとは
セルフネグレクトは、以下のようなプロセスで起こると考えられています。
・健康や安全に対する関心が薄れる
・自分自身を放置し自己管理ができなくなる
つまりセルフネグレクトとは、意欲の欠如と極端な自己肯定感の低下により、生活を維持する能力と自身の健康や安全を損なっている状態を指します。
①個人衛生の欠如
身だしなみ、歯磨き、風呂やシャワーに入れないなど、衛生状態が悪化して行きます。
②食事・栄養の不足
食事への意欲がなくなり、適当になる、もしくは食べなくなることもあります。
③住居の管理の放棄
家の掃除をしなくなり、ゴミを捨てなくなります。
➃治療の放棄
具合が悪くても病院に行かない、または慢性疾患のある人が治療が中断してしまうことがあります。
(参照元:「セルフネグレクト 自分のケアをやめる」 こころ診療所吉祥寺駅前/「セルフネグレクトとは?原因や対策、セルフチェックシート」 みんなの遺品整理2024年7月)
子世代がセルフネグレクトになる原因
なぜこのような状態になってしまうのでしょうか?
子世代のセルフネグレクトの原因には、主に「経済的理由」「社会的理由」「精神的理由」の3つがあると言われています。
①経済的理由
健康的な生活を送るためには、ある程度の収入が必要です。経済的に困窮すると、食生活が乱れたり、体調不良でも、薬を買わなかったり、病院に行かなくなったりします。経済的に余裕がないと、精神的なストレスにもつながります。
近年、若者の経済難が様々なメディアで取り上げられていますが、実際に経済的に苦しんでいる若者はどの程度いるのでしょうか?
2022年の内閣府による年齢層別(0~85歳以上)・性別の想定的貧困率を見ると、男女共に最も多いのが80歳以上(男性19%、女性:31%)、次に75-79歳(男性:17%、女性:25%)でした。そして、これらの高齢者に続いて多かったのが20-24歳(男性:約22% 女性:約16%)という事実が明らかになりました。
相対的貧困率とは、貧困線と呼ばれる一定基準を下回る所得しか得ていない人の割合を言います。
このデータによると若年層の約5人に1人が経済難で苦しんでいることになります。
また、男女ともに「正規雇用」に比べて「非正規雇用」の貧困率が全年齢層を通じて高いというデータがあります。総務省が2023年に行った調査によると、25-35歳において、非正規雇用者が約4割を占めていました。
このようなデータから読み取れるのは、経済難を抱えている若年層が一定数いるということです。
特に、今まで家事をしたことがなく、一人暮らしは初めてという若者が経済難を抱えると、食生活の乱れなどから、セルフネグレクトになる可能性が高くなるので注意が必要です。
②社会的理由
20代の女性の約5割、男性の約7割が、30代は男女共に約3割が「配偶者、恋人はいない(未婚)」と回答しています。
一人暮らしの場合、恋人がいないと、定期的に自宅の様子を見に来る人がいないため、セルフネグレクトのサインに気づいてもらえない状況になります。
また、かつては家族内で育成されたコミュニケーション能力や社会性は、核家族化が進むことで、学べる機会が減り、対面でのやり取りに苦手意識を持つ人を増えていると言われています。
更に、長引くコロナ禍により、対面でのコミュニケーションが苦手な若者が増えているというデータがあります。
株式会社ディーアンドエムが2022年に行った調査によると、10~30代の半数近くが「雑談・会話が苦手」と回答しています。
人と上手く関われないと感じていると、自宅に引きこもりがちになり、セルフネグレクトに陥る危険性が高まると言われています。
③精神的理由
令和4年に内閣府が行った国民生活に関する世論調査によると「何らかの不安を感じている」人の割合は18~29歳で7割を超えており、30~39歳に至っては8割を超えていました。
実は最近、25~30代が抱える漠然とした不安や焦りは「クォーター・ライフクライシス」と呼ばれるようになり研究がされるようになりました。
「クォーター・ライフクライシス」社会人生活に慣れてきた一方、理想の人生と現実にギャップを感じたり、周囲と比べてしまうことによって、自分は何者なのか、何をしたいのか、どう生きていくのかといったことについて深く考え込む時期であり、「人生の低迷期」ともいわれています。
このような精神的な理由から、セルフネグレクトになることもあると考えられています。
(参照元:「国民生活基礎調査(貧困率) よくあるご質問 厚生労働省/「 若者に増えるセルフネグレクトとは?原因と対策を交えて解説!」 株式会社プログレス/「相対的貧困率の動向 (2022年調査update)」内閣府男女共同参画局/「労働力調査(基本集計)2023年(令和5年)平均結果」総務省/セルフネグレクトの原因は?6つの対処法や起こりうるリスクを解説 株式会社タイヨー/「第2節 結婚と家族を取り巻く状況」 内閣府/「国民生活に関する世論調査」 内閣府/「アラサーに立ちはだかる壁。クォーターライフ・クライシスにデータから迫る」2023年/「深刻な「コロナコミュ障」の実態が明らかに」 Press)
子世代がセルフネグレクトにならないようにできること
東京都福祉保健局によると、セルフネグレクトの予防策は「見守りのためのサイン」だと言います。
見守る内容として「具合が悪そうに見える」「急に痩せてきた気がする」「家に閉じこもってほとんど外に出てこない」「 金銭管理がうまくいっていない、滞納がある」などが挙げられています。
しかしながら、遠くに一人暮らしをしている子を親がこのような見守りをするには限界があるかと思います。
そこでお勧めしたいのが、『ひとり暮らしのおまもり』です。
同サービスは、子が一日に1回は開ける冷蔵庫などに設置したセンサーに一定時間*動きがないという異常がある時にだけ親のスマートフォンに通知が行くシステムです。(*5~24時間の間で自由に設定可能)
そのため、「こちらから連絡すると子供の仕事や生活の邪魔になるのでは…」と気兼ねすることなく、子が元気に生活しているかどうか見守ることができます。
初期設定の時だけ、子供の住まいに行って「ステーション」と親のスマートフォン(無料アプリ)を連動させる必要がありますが、初期工事・費用は一切不要です。
「かわいい子には旅をさせよ」とは言いますが、「親が見守ってくれいる」と感じることは、一人で暮らすお子さんの励みとなるのではないでしょうか?
子によっては「親に心配かけたくない…。」とつらい状況を親に話さないこともあるかもしれません。
ぜひ『ひとり暮らしのおまもり』をお子さんの心の支えとしてプレゼントしてみてください。
(参照元:「セルフ・ネグレクトの予防と支援の手引き 東邦大学 )