開発者秘話・裏話③:開発までのストーリー<プロダクトへの隠れたこだわりとは>

開発者秘話・裏話③:開発までのストーリー<プロダクトへの隠れたこだわりとは>

『ひとり暮らしのおまもり』には、『見守られる側』用のデバイスと『見守る側』のアプリがあります。今回は、本サービスを開発した株式会社日本ビジネス開発の代表である矢野が、開発までのストーリーとプロダクトへの隠れたこだわりを語ります。

Q:開発を思い立たれてから、実際のローンチまでどのくらいの時間がかかりましたか?

A:構想から約1年半~2年くらいかかりました。

センサーとアプリの仕組みは、実は別の目的で既に開発されていました。それは、「落とし物防止タグ」と「在宅確認」の2つの機能で、両親が共働きの子供が鍵などを落としても困らないように、また子供が家にいることを親が確認できるようにという仕組みでした。
ところが、開発を進めているうちに、新型コロナウィルス感染拡大が起き、多くの親が在宅勤務になって子供と一緒に家にいる時間が増えました。その一方、人の移動が制限され、一人暮らしをしている高齢者の様子を見に行くことが困難になり、市場のニーズが大きく変化しました。
実際に、私も実家に一人暮らしをしている母のことが心配になるようになりました。そこで、この技術を高齢者の見守りに使えないかと思いました。また、周りにも聞いたところ、私と同じような状況で悩んでいる方が割と多いことを知り、開発に着手しました。ですので、ローンチまでの約2年間は、「落とし物防止タグ」と「在宅確認」の兼用であったため複雑だったアプリの操作性を改善するために主に費やしました。

 

Q:現在のソフト・ハード開発パートナーを選ばれた経緯と理由は何ですか?

A:プロダクトを見て愛情をかけて作られていると感じたからです。

『ひとり暮らしのおまもり』のソフト・ハード開発と製造は、もう7年以上お付き合いのあるメーカー(本社:台湾)に依頼をしています。
出会いは、あるIoTエクスポです。私は常々その人となりは、会社であれば「商品をみればよくわかる」と考えていますが、そのメーカーが展示していた製品のハードウェアがすごくきれいに仕上がっていました。その時に、プロダクトがどれだけ愛情をかけてつくられたのを感じとることができ「この会社は信用できる。」と思って声をかけたのがきっかけです。
長年のお付き合いからの信頼関係と、技術的にも優れていて、小回りがきくという点から、今回の『ひとり暮らしのおまもり』もお願いしました。

 

Q:メーカー技術者と共同開発されるにあたり苦労された点は何ですか?

A:互いのこだわりに対する折衷案をとことん話し合いました。

私たち企画者は「ユーザーにとって本当に必要な機能だけに絞って極力シンプルにしたい」という想いがあります。一方、技術者は「よりたくさんの機能をユーザーに提供したい」という想いが強いです。そのため、時には互いに譲れない部分で、折衷案をとことん話し合わなければならないこともありました。
もちろん、色々な提案を積極的にしてくれるのでありがたいとも思っています。例えば、『見守られる側』からのSOS発信を目的とするケアウォッチもパートナー企業からの提案でした。ですが、その他に何の機能をつけるかについては、話し合いが必要でしたが最終的に時間、日付、万歩計に絞り込まれました。特に万歩計に関しては、1日の歩数を『見守る側』がアプリからも見れるので、生活の様子をさりげなく知ることができ、良い機能だと思っています。

 

Q:センサーのカラー展開に対するこだわりは何ですか?

A:技術的に難しい『カッパー』をあえて採用したことです。

センサーは2色展開ですが、標準色のブラックに加え、カッパーを採用したのは、色々なインテリアに馴染む色にしたいというデザインへのこだわりからです。カッパーは木目にも馴染み、派手かというとそうでもなく、だからといって目立たないわけでもなくちょうど良いと思っています。
実は、このカッパーの色味を出すのに非常に苦労し、いくつ作ったのか覚えていないくらいたくさんの試作品を作りました。カッパーの塗装にはスマートフォンのコーティングと同じ技術が使われており、これができるのは台湾でも1、2か所しかないと言われています。カッパーの塗装は、不良率も非常に高いのですが、こだわりからあえてこの色を採用しています。

Q:センサーのデザインでこだわられた点は何ですか?

A:製造のハードルを上げてでも、デザイン性を優先しました。

通常、センサーの表面というと平らなものがほとんどです。というのも傾斜をつけると、塗装技術のハードルが一気に上がるからです。
『ひとり暮らしのおまもり』のセンサーは、指でつまめるくらいのサイズですが、このような小さなスペースにあえて傾斜をつけたのは、デザイン性を重視したからです。確かにこの形状を美しいと感じるかどうかは人によるとは思いますが、製造のハードルを上げてでも細部にこだわるという企業姿勢が、このプロダクトに表れると考えています。
また、センサーに生活防水機能をつけたのも、こだわった点です。先に述べたパートナー企業は、このようなディテールや要望に対しても、一つ一つ丁寧に対応してくれました。

 

Q:現在、パートナー企業とはどのような取り組みをされていますか?

A:定期的にミーティングを行い改善点と今後の展開について話し合っています。

パートナー企業と常に模索し取り組んでいるのは、今あるテクノロジーを活かして、異常通知を見落とすリスクを、限りなくゼロに近づけるということです。
例えば、LINEで複数名の『見守る側』が異常通知を確認できる追加機能を開発致しました。
またケアウォッチの形状についても、現在の課題に対する改善案を検討しています。ケアウォッチの最も需要な役割は、『見守られる側』が緊急時にSOSを発信することですが、今の形状だと、スマートウォッチくらいの大きさがあるため、自分の時計をつけたいという時には身に着けないというリスクがあります。そこで、時計と一緒に着けられるようなスリムなバンドに変えることも検討しています。
まだお話できない部分もありますが、パートナー企業と共に、今あるIoT技術を活かしながら継続的に『ひとり暮らしのおまもり』のアップデートに取り組んで行きたいと考えています。このアプリを使用する前は、母のことを2~3週間考えないということもよくあり、電話をすることも稀でした。それが、このアプリを個人的に使い始めてから母親のことを考えることが少し増え、以前よりも電話もかけるようになったという中長期的な変化が起こりました。
IoTを駆使した技術が、このような叙情的な副産物も生むのかということが『ひとり暮らしのおまもり』を開発した私自身でも想定していなかった大きな気づきでした。

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ひとり暮らしのおまもりHP

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