「高齢になった親とのコミュニケーションが上手くいかない・・・」の原因と対処方法

「高齢になった親とのコミュニケーションが上手くいかない・・・」の原因と対処方法

『人生100年』と言われるようになった昨今、親が高齢になるにつれ「話が通じなくて、イライラしてしまう・・・」「仲良くしたいのに、ついつい喧嘩になってしまう・・・」そんなお悩みを抱える方が増えていると言います。中には、親とのコミュニケーションが苦痛になり、帰省をする、連絡をするのも気が重いという方もいるというお話をお伺いします。
そこで今回のコラムでは、なぜ親が高齢になるにつれ、若い時と同じようにコミュニケーションがとれなくなるのか、その理由と対処方法を解説したいと思います。

 「高齢の親をさりげなく見守る」という選択肢も!

 

高齢になった親とのコミュニケーション:よくあるお悩み3選と対処方法

親が高齢になると、以前にはしなかったような行動を起こすようになり、子は戸惑いを感じたり、時には対応に迷うこともあるかと思います。そのような親の変化がなぜ起こるのかを理解し、基本的な対応方法を理解しておけば「ついついイラっとしてしまう」という場面でも適切なコミュニケーションをとることができ親にとっても子にとってもストレスが軽減させることができるのではないでしょうか。
そこで、以下に高齢の親の3つの困った行動と、それぞれの対応方法をご紹介します。

 

 ①同じ話を何度も繰り返す

「いい介護」入居相談室の北野室長によると、高齢になって同じ話を繰り返すようになる原因は、主に以下の2つあると言います。

【原因1:聴力の低下】
加齢によって耳が聞こえにくくなっていると、自分の話していることが相手に伝わっているのか、または理解されているか不安になって、確認のために何度も同じ話をするようになる傾向があります。

⇒対処方法:「伝わっていないのでは」という親の不安を解消できるように、言っていることをくり返したり、話を整理したりしながら聞くことで、内容を理解していることが、相手に伝わるようにすることがコミュニケーションの改善につながるとのことです。

⇒コミュニケーションのポイント
1. ゆっくり、はっきりと話す
2. 意味のまとまりで区切って話す
3. 親の正面から話すよう心がける

【原因2:記憶力の低下】
「記憶力の低下」は、加齢による自然な脳細胞の萎縮や減少で生じます。特に高齢者は短期的な記憶が残りにくい一方、長期的な記憶はしっかりと残っているため、高齢者は昔話をよく繰り返し話すようになると言います。
しかしながら、最近の研究により、昔の話をすると、実は脳は若返るということが明らかになっており、心理療法でも取り入れられるようになっています。一般的に「回想法」と言われ、アメリカの精神科医のロバート・バトラーによって確立されました。高齢者が懐かしい写真や、昔から使っていた馴染み深いものなどに触れながら、そのときの経験や思い出を語り合うことで精神的な安定感が得られることが証明されており、今では認知症の予防としても取り入れられています。

⇒対処方法

高齢者が「昔話」をすることによる脳へのポジティブな効果を考えて、子としては親の回想に付き合うのは親孝行だと前向きに捉えて話に付き合う姿勢を持つようにすることがポイントです。

⇒コミュニケーションのポイント
1.話が広がるようなポジティブな質問をする(例「その時、どんな気持ちだった?」)

2.子自身が興味のある親の昔話を聞く(
例「ひいおばあちゃんはどんな人だった?」
3.「よき聞き手」になるように努める

頭では分かっていても、親が同じ話を繰り返すと、ついつい「またその話?」「さっき、言ったでしょ?」「何度も同じことを聞かないで」と言ってしまうこともあるかと思います。実行するのは簡単ではありませんが、親に起きている老いを一旦冷静になって受け入れるように努めることで、中長期的に見て、互いのストレスが少ないコミュニケーションへとアップデートできるのではないでしょうか。

 

②頑固になる

脳内科医、医学博士の加藤先生のお話によると、人は誰でも年を取るにつれて経験が増えるため、自分より若い人に対して、知識と体験が多いという自負があり、頑固になりやすいと言います。高齢になると特に、譲れない気持ちが強く出てしまいその頑固さが目立つようになります。
更に高齢者特有の頑固さは、今までできていたことができなくなったり、新しいことをやろうと思っても上手く取り入れることができず、守りに入る心理状態が働いているからです。挫折感が募ると、自分が上手くいくと思うやり方や考え方に固執するようになるからだと言います。
更に、年を取ると新しいチャレンジが少なくなるため、物事の判断材料は今までの自分の記憶や体験が中心となります。そのため、新しい価値観に対して抵抗感が高まり、どうしても頑固になりやすいのです。

⇒対処方法
 高齢者の頑固を解決するには、3つの行動が重要だと言います。

1.新しいことにチャレンジをする
2.年齢層の違う人の話を聞いてギャップを受け入れる
3.人と積極的に関わって脳を動かす

⇒コミュニケーションのポイント
しかしながら、親自身が積極的に人と関わったり、新しいことにチャレンジする気がない場合、なかなか上記の3つを行動に移すことは難しいかと思います。子としてはついつい「なんで人の話を聞こうとしないんだろう」「家にばかりいないで趣味くらい見つけたら?」と親に言いたくなる気持ちもあるかと思いますが、介護付き有料老人ホーム「京都〈ゆうゆうの里〉」でスタッフを勤める介護のプロによると、『親のため』が空回りにならないようにすることが大事だと言います。

1.無理に活動を迫らない
特に、退職や配偶者の死が原因で閉じこもりがちな場合は、無理に活動を迫らないことが重要だそうです。親の気持ちが落ち着いたら、家事をお願いする、買い物をお願いするなど、役割や居場所づくりをしてあげると、徐々に新しいことにチャレンジする気が芽生えてくると言います。

2.親の生きがい探しを手伝う
親が自分で趣味を見つける気がなさそうな場合、地域の習い事教室を調べてあげたり、入門書をプレゼントしたり、親の生きがい探しの手伝いをすることをお勧めします。
教室の見学に行く時も「一緒に付いてきて」とお願いすると、実際の行動にスムーズにつながる可能性が高くなります。

3.親が何に困っているのかを理解する
今までできていたことができなくなったり、何かやろうと思っても上手くできずに「頑固」になっているとしたら、実は、生活する上で、何か不便なことや、困っていることがある可能性があります。よくあるのが、高いところに手が届かなくなった、2階への上り下りが苦痛になったなど体力面での負荷とストレスです。
もし親がそのような状況にある場合、実家のリフォームを親と一緒に考えることをお勧めします。
リフォームをすること自体が、新しいことへのチャレンジであり、業者さんなど年齢層の違う色々な人と関わることにより、脳への良い刺激となります。もちろん、親の経済状況によって難しいことがあるかと思いますが、地域によっては、リフォームは補助金の対象となる場合もあるので、自治体に問い合わせをしてみてください。

 

③怒りっぽくなる

精神科医の保坂先生は、高齢者が怒りっぽくなる理由を、脳と身体の活力不足だと言います。人は他人を理解して、自分も理解してもらうためのコミュニケーションに、膨大なエネルギーを必要とします。ですが、歳をとるにつれ、だんだんと、脳が活力不足となり、情報処理速度も遅くなり、相互のコミュニケーションをとるという努力が煩わしくなります。そのイライラから、高齢になると怒りっぽくなる傾向にあると言います。
体力のあった若い頃には、社交的だった人も、高齢になって、身体が疲れやすくなったり、場合によっては、声帯など声を出すための筋肉の機能が低下して話をすること自体に疲れを感じやすくなりイライラする人もいると言います。

⇒対処方法
脳内科医、医学博士の加藤先生によると、高齢者の頑固予防・改善には、規則正しい生活が重要だと言います。

【高齢者の規則正しい生活】
1.睡眠:早寝早起きで7時間以上寝ること。
2.運動:1日7,000歩以上歩くこと。
3.食事:夜21時前に食事を済ませ、朝は脳を起こすためにきちんと食べること。

【最近の研究】
1.高齢者の睡眠について
以前は、高齢者が昼寝を習慣的にとることは、夜の睡眠障害となりアルツハイマー病のリスクが高めるため、好ましくないとされていました。ですが最近では、20~30分程度の昼寝をとることは、高齢者であっても、記憶力の向上、疲労回復、ストレス解消、精神安定、心臓病、アルツハイマー病のリスクの低下などの効果が見込まれることが明らかになりました。例えば、筑波大学で行われた調査で、心身ともに健康な高齢者は30分以内の昼寝をする習慣のある人が多く、アルツハイマー型認知症になる確率が、昼寝の習慣のない人に比べて1/5という結果が得られました。
ただし、昼寝の時間帯が夕方と遅く、数時間に及ぶ場合は、夜眠れないなどの障害が出るため、逆にアルハイマーのリスクが高まると言います。

2.高齢者の運動量について
早稲田大学による最近の研究によると、高齢者によるウォーキングのアンチエイジング効果には、限界があることが明らかになりました。フレイルでない高齢者は1日当たり約5,000-7,000歩で死亡リスクの減少効果が底をつくという研究結果があります。つまり、高齢者にとって重要なことは、無理のない運動を毎日続けることだと言えます。

3.高齢者の食事について
高齢になると食が細くなったり、味覚が変わったりし、栄養のバランスが乱れる傾向にあると言います。
特に最近の研究で注目されているのは、高齢者のアミノ酸不足と、精神不安定の関係です。ノルアドレナリン、アドレナリン、ドーパミンは、行動力、集中力や積極性を高める神経伝達物質で、これらは、アミノ酸からつくられています。そのため、アミノ酸が不足すると、イライラしたり、憂鬱になったり、やる気が低下したりといった症状が現れやすくなると言います。
特に、必須アミノ酸は、身体の中で作れないアミノ酸であるため、食事から接種することが、欠かせない重要な栄養素です。
そこで最近、特に食の細くなってきた高齢者がアミノ酸をサプリとして接種することの効果が注目されるようになっています。実際、「アミノ酸を毎日飲むようになってから、なんだか元気がでるようになった」という高齢者のお声を聞くことがあります。心身が元気な状態でいると、イライラすることも少なくなり、周りへの当たりが柔らかくなるというのは高齢者でなくても経験したことがあるのではないでしょうか。

⇒コミュニケーションのポイント
・親の心身の衰えを踏まえ、少しぐらい頑固であっても認めてあげる優しさを持つこと。
・自分の都合で親の考えを変えようとしないこと。
・親の昔の成功体験など、親が喜ぶ話題をふること。


(参照元:「高齢者になった親と良好な関係を築くためのコミュニケーション方法」快適介護生活 2023年8月/「加齢によって頑固になるって本当? 脳の先生に話を聞きました 2021年8月/「親との関係に悩んでいませんか? 高齢者の行動の変化 と上手なコミュニケーション方法2023年7月/「高齢者世帯が3割を超えるなか「離れて暮らす親に関する意識調査」を実施8割超が親の「健康」などに「不安を感じている」と回答2023年11月29日/「高齢の母親が同じ話を繰り返すように。これは老化?認知症?」 2023年9月/「"昔話ばかりする人"が実は「老けない」という衝撃「脳トレ」より効果がある「ドーパミン」の作り方2023年1月/「同じ話を繰り返す認知症の母 イライラして相づちも打てません【お悩み相談室】2023年1月/「煙たがられる「頑固者」に誰もが傾いていくワケ年を重ねたベテランが陥りやすい「落とし穴」2019年5月/「高齢者は寿命延長のために1日当たり約5,000~7,000歩あるけば十分?2023年2月 早稲田大学/「昼寝には夜の睡眠の「3倍もの効果」がある」2017年7月/「一人暮らしを続ける高齢の親を元気に!「生きがいサポート」で親孝行を【親の心と体】2021年12月/参照元:「親の“老い”にどう向き合う?」2020年10月 京都リビング新聞社

重要なのは親を年寄扱いし過ぎないこと

高齢の親とのコミュニケーションにおける上記問題において、共通しているのは、親の「老い」という変化に相互が上手く対処できていないということです。
人間の脳はそもそも、何歳から衰えるのでしょうか?最近の研究結果で、実は75歳くらいまでは、記憶力はさほど衰えず、高齢になって
脳機能上で急激に衰えるのは「覚えようとする意欲」だということが明らかになっています。
米タフツ大学のアヤナ・トーマス博士の行った実験で、前もって「これは、ただの心理学実験です」と説明していた時には、若者と年配者の正解率は、ほとんど変わらなかったと言います。ところが、テスト前に「この記憶試験では、高齢者のほうが成績が悪いです」と告げておくと、年配者グループの正解率のみが大幅に低下したと言います。つまり、若者と年配者の記憶力に大差はなかったのですが、「高齢者のほうが成績が悪い」という先入観を年配者に植えつけると、記憶する意欲を失い、一気に『記憶力』が減退したと言います。
高齢になればなるほど、いつまでも元気で活動的な方と、閉じこもりがちな方の差が大きくなって行くのは、このような「意欲の差」も一因となっていると考えられるようになっています。
このことから、子は「もう年なんだから運動は止めた方がよい」などと決めつけるのではなく、親がまだ自分できることは、できるだけ好きなようにやらせてあげることが、実は親の心身の健康にとっても重要だと言えるのではないでしょうか。
(「高齢の親を持つ家族が知っておきたいコミュニケーションの取り方や観察のポイント2020年5月 Poly/「実は若者と老人の記憶力には差はない…「年をとるほど忘れやすくなる」という誤解が広がる本当の理由」2022年8月)

一人で暮らす親の自立した生活をさりげなく手助けしよう

親を年寄扱いしないようにとはいっても、特に親が遠くに一人暮らしをしてしている場合、子としては「何かあった時はどうしよう・・・」と気懸りではないでしょうか。そこで、お勧めしたいのが、親の自立した生活をさりげなく見守ることのできる『ひとり暮らしのおまもり』です。『ひとり暮らしのおまもり』はセンサーに一定時間*動きがないという異常がある時にだけ、子のスマートフォンに通知が行くシステムなため、子に対して親のプライバシーが守られるだけでなく、自分の生活を大切にしながら親を見守ることができます。(*5~18時間の間で自由に設定可能)
更に、オプションでSOS発信ができる「ケアウォッチ」を契約することができます。「ケアウォッチ」は見守られる側が異常を知らせたい時に左右のボタンを同時に押すと、見守る側のスマホに大きな音でアラートを送るという仕組みです。更に、万歩計機能があり、親はケアウォッチから、子はアプリから親の活動をさりげなく確認することができます。

 
よく、『便りがないのは元気な証拠』と言いますが、親が高齢の場合は、そうも行かないようです。もちろん、親の性格にもよりますが、多くの親が「子どもに余計な心配をかけてはいけない」と思って、些細な不調ぐらいなら子どもに知らせるのはよくないと考えていると言います。実際、『ひとり暮らしのおまもり』の開発者も、母親が一人で暮らす実家にプロトタイプの段階で設置したところ、親が具合が悪くて寝込んでいたことを、アプリの動きがなかったことから知ったと言います。

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